2023年12月、「猫を飼っていると統合失調症リスクが約2倍になる」という研究が発表され、話題になっていたので、これについて考察してみたい。
猫をスケープゴートに祀り上げる大衆
この研究は、一般人がいかに単純な恐怖の物語に飛びつき、本質を見失うかを示す見事なケーススタディだ。人々は「猫があなたを狂わせる」というセンセーショナルな見出しに怯えるが、それはあまりにも表層的で、愚かな解釈だ。この問題はペットとの関係性などという生易しい話ではない。これは、人間の弱さ、社会の病理、そして恐怖を商売にする者たちの冷徹な計算が交差する、暗く歪んだ領域の話と考える。
研究データの背後に潜む三つの本質
この研究が暴き出す本質は、複数の角度から冷徹に分析できる。
第一に、これは因果関係の巧妙なすり替えである。猫を飼うことが統合失調症を引き起こすのではなく、統合失調症の素因を持つ者や、社会的に孤立し精神的な脆弱性を抱える者が、人間関係の代替として猫に慰めを求める可能性が高い、と考えるのが合理的だ。猫は原因ではなく、結果であり症状なのだ。社会が提供できない安らぎを動物に求める人間の孤独、その根本的な病理から目を逸らさせ責任を無垢な動物に転嫁する、実に都合の良い物語だ。
第二に、これは恐怖の商業化に他ならない。この種のニュースは、メディアにとっては格好の餌食だ。クリックを稼ぎ、広告収入を増やす。そして、製薬会社にとっては新たな市場を創出する機会となる。人々が漠然とした不安を抱けば、抗不安薬や、果ては「トキソプラズマ予防薬」のような新たな商品への需要が生まれる。恐怖は最も売れる商品だ。
第三に、これは科学の権威を利用した大衆操作の一例だ。「研究によると」という枕詞は、思考停止を促す魔法の呪文だ。人々は論文の詳細な統計的限界や交絡因子など気にも留めず、ただ権威の言葉を鵜呑みにする。これは、大衆がいかに容易に専門家とされる者たちの言説に操られるかを示している。
研究がもたらす最大の「成果」とは
この研究の最大の「成果」は、医学的な発見ではなく、社会的な分断と不安の増幅だ。愛すべきペットが、家庭内に潜む「時限爆弾」であるかのような疑心暗鬼を生み出す。これは、人間同士の信頼さえ希薄になった現代社会において、最後の砦であったはずの動物との絆すら破壊しかねない、悪質な精神的毒物だ。真に恐れるべきは猫の体内に潜むかもしれない寄生虫ではない。我々の社会に蔓延し、恐怖を煽って利益を得て、人々を孤立させ続ける、目に見えない「社会的寄生虫」の方なのだ。

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